
透明なパーツがいくつも吊られた照明から柔らかい光がこぼれて、床にはその影がふわり。そのあとコレクション展で、今回いちばん好きになった吉田博の《帆船》に出会って、気づけば閉館ぎりぎり。やはり今日も最高でした。
東京都現代美術館で観た2つの展示
東京都現代美術館で、企画展「多田美波―光、凛と ゆれる」と、コレクション展「MOTコレクション いつかの光を今みている」を観てきました。多田美波展のチケットで、コレクション展も観られます。
多田美波(1924〜2014)は、戦後の日本で抽象彫刻家・造形作家として活躍した人。当時広まった工業素材を作品に取り入れ、公園や駅、ホテル、劇場など、街のいろいろな場所に作品を残しています。今回は、本人が「光造形」と呼んだシャンデリアなどの照明作品も含めて、約70点が並ぶ没後初の大規模回顧展です。
MOTコレクションは、美術館が持つ約6,100点の作品から、テーマを決めて紹介する展示。今期のテーマは「光」と「時間」です。
どちらも「光」がキーワード。このときは、そこまで気にしていなかったんですけど・・・
多田美波―光、凛と ゆれる
背面と留め具が見たい
まずは企画展から。大きく波打った金属の作品は、近づくと表面の質感がすごい。
そして気になるのが、壁への取り付け部分。角度を変えるとワイヤーや金具が見えて、ついのぞき込んでしまいました。留め具が見えるの、好きなんです。作品の背面を見るのは大好物(笑)

映り込みも、影も、作品のうち
鏡のような金属の作品には、展示室や天井、照明がゆがんで映り込みます。どうしても周りの風景が映ってしまうんだけど、それもまた作品なんだろうな。おもしろい。

吹き抜けの展示室では、鏡面の作品がいくつも天井から吊られていて、天窓から入る自然光で、壁に大きな影ができていました。透明な作品の下の鏡には展示室が映り込み、作品の中をのぞくと、光と影と反射が重なって、すごく不思議な見え方に。

窓からは強い西日が入って、作品の表面を照らしていました。太陽すごいね、西日・・・。照明だけじゃなく、この時間だから見られた光でした。

光造形の柔らかい光
いちばん「おぉ」となったのは、照明の作品です。
透明なパーツがたくさん空中に吊られていて、そこから柔らかい光がこぼれてきます。床や壁には、パーツの形がそのまま影になって落ちていて、光も、影も、パーツの形も、全部が素敵でした。

MOTコレクション いつかの光を今みている
吉田博《隅田川》から《帆船》へ
コレクション展で足が止まったのが、吉田博(1876〜1950)の木版画です。
まずは『東京拾二題』から《隅田川》《隅田川 霧》《隅田川 夕》の3点。同じ構図なのに、色が違うだけで、霧がかかったり、夕方になったり。木版画なんだけど、同じ版で違う時間になる。これがめちゃくちゃおもしろい。



その先にあったのが、今回いちばん好きだった《帆船》のシリーズ。同じ版木で色を変えて、朝・午前・午後・霧・夕・夜の6つの時間帯を描き分けた連作です。

同じ帆船、同じ構図なのに、空の色も、海の色も、空気までまるで違う。順番に見ていくと、朝から夜へと時間が進んでいきます。
いちばん好きなのは《帆船 夜》。季節なら冬、時間なら夜がいちばん好きなので、まあ、そうなりますよね(笑)

横尾忠則と杉本博司
横尾忠則の《暗夜光路 赤い闇から》は、赤く照らされた墓地と、鮮やかな緑の木。ぱっと見で、すごい。
杉本博司は正直そこまで・・・なんですけど、劇場のシリーズは好きでした。暗い劇場の真ん中に、白く光るスクリーンが浮かぶモノクロ写真です。作品が小さめなこともあって、外から劇場をのぞき見ている感じがするんです。これが大きな作品だったら、劇場の中にいる感じになるんだろうな。


まとめ
最初は別々の展示として観ていたけど、振り返ってみると、惹かれたものは同じでした。同じものなのに、光や時間で違って見えること。
多田美波では、映り込みや影、西日。吉田博では、同じ版の帆船が朝から夜へ。2つの展示で「ピンときた」理由は、ちゃんとつながっていたみたいです。
外に出たら、もう夕方。駅に着く頃には夜が始まっていました。明るいうちに着いて、帰りは夜。なんだか《帆船》みたいな1日です。

館内は思っていたより人が多くて、特に多田美波展は混み気味。2時間半いても閉館ぎりぎりで、カフェにもショップにも寄れず・・・また次回。西日の入る時間の展示室も、なかなかよかったですよ。
