
実はあらすじをざっくりしか知らずに観たのですが、ふたを開けてみれば、玉三郎さん祭り。やはり今日も最高でした。
『ふるあめりかに袖はぬらさじ』ってどんなお話?
有吉佐和子さんの作品で、杉村春子さんのお園を玉三郎さんが受け継ぎ、何度も上演されてきた名作です。今回観たのは、2007年12月の歌舞伎座で、はじめて歌舞伎として上演された舞台の映像です(上映時間164分)。
舞台は幕末、開港してまもない横浜の遊郭「岩亀楼(がんきろう)」。三味線芸者のお園は、病み上がりの遊女・亀遊(きゆう)を看病しています。亀遊は通辞(つうじ:通訳)の藤吉と恋仲。ところがアメリカ人のイルウスが亀遊を見初めて身請け(お金を払って遊女を引き取ること)を言い出し、亀遊は自ら命を絶ってしまいます。
その死が、攘夷(じょうい:外国を追い払おうという考え)の嵐が吹く世の中で、「異人に身を許すより死を選んだ攘夷女郎」という美談にすり替わっていく…というお話。タイトルは、瓦版に載った亀遊の辞世の句の一節から。「降る雨」と「アメリカ」がかけてあるんです🇺🇸
9月の月イチ歌舞伎はMOVIX京都で
今回も、新京極通にあるMOVIX京都へ。館内では、月イチ歌舞伎のかぶきにゃんたろうがお出迎え。いつもかわいい🐈 この前買ったぬいぐるみを今回は連れてくると決めていたのに、しっかり忘れました。まだ連れ歩き慣れてないのよ(笑)

シアター6は6階なんだけど、今日はエスカレーターで。客席は満席ではないものの、人がたくさん。玉三郎さん効果なのでしょうね、さすがです。
イヤホンガイドは、もちろん借りました。アプリの画面には「あと100日」の表示。まだまだ使えるけど、その前に上映が終わっちゃうよね〜😭


解説で助かったのは、登場人物が攘夷派かどうかのところ。ただ、役者さんは当時の名前で紹介されるので、頭の中がいまの名前にアップデートされていると少し混乱します😵💫 「市川海老蔵、現在は市川團十郎」みたいなガイドだとすごく助かるけど、それをやろうと思うと、ほかのたくさんのガイドも変えなきゃいけないから大変ですよね…
物語をたどりながら
重たいはずなのに、さらっと笑える
前半は身請けの話なので重たいはずなのに、全体的にコミカルで、さらっと観られました。
藤吉役の獅童さんは、若くて初々しくて新鮮。お座敷では、イルウス役の彌十郎さんも、通訳をする獅童さんも面白いんです。
そして笑えたのが、唐人口(とうじんぐち:外国人の客を相手にする遊女)の遊女たち。マリア役の福助さんが面白すぎました😂 見たことのないような衣裳に、滑稽なお化粧。でもそれ以上に動きがコミカルで、ぱっと見で笑っちゃう。松也さんや新悟さんも面白かったです。
「実は生きてました」を期待したけれど
亀遊が自ら命を絶ってしまう場面では、「実は生きてました〜」というパターンを、つい期待してしまいました。でも、そうなると話が変わっちゃいますね。いやー、つらい。
講談みたいな語りと、お園さんの嘘
やがて、亀遊を「攘夷女郎」に仕立てた瓦版が出回ります。お園は最初「こんな嘘」と笑うのに、岩亀楼の主人(勘三郎さん)から、客が喜ぶ話をしろと言われて、しかたなく語り始めることに。この勘三郎さんとのやりとりが、最高に笑えるんです。しかも人間味があって、わかりみ深い。あの場にいたら、たぶん誰でもそうやってその場を凌いだと思います。
いざ語り始めると、お園さんの手には張り扇(はりおうぎ:講談師が台をたたく扇)みたいなものがあったような…。釈台(しゃくだい:講談師の前に置く小さな机)がないだけで、これってもはや講談だよね?!と思うほど。饒舌で空気が読めるお園さんだからこそ、話は自然とふくらんでいきます。
語られるのは、うそばっかり。でもそれは、その場の流れでついただけの嘘なのか、それとも嘘で亀遊を守ったのか。どっちなんだろう?
藤吉もつらかっただろうな
藤吉がアメリカへ旅立つ前にお園と会う場面では、藤吉もつらかっただろうな…と。亀遊が生きていたら、愛する人がほかの人に身請けされるのを泣く泣く見ることになる。でも死んでしまったら、自分が身請けすることもできない。ってか、そもそも高すぎて、藤吉には亀遊を身請けするなんて絶対に無理なわけで…。どちらの未来にも、二人にとっての明るい明日は存在しないのね。
玉三郎さん祭り
お園さんがこんなにコミカルだとは知らずに観たので、最初の看病の場面から、がしっと心を鷲掴みにされました。もう玉三郎さんじゃなくて、どっからどうみてもお園さんなんです。
お三味線の場面も、講談の場面も、「玉三郎さんってすごい!」「玉三郎さんって面白い!」の連続。間の取り方もだけど、普通のことを言いますが、演技がうますぎます。もはや演技でもなくて、お園さんがのりうつってる。そして50〜60代の女性特有の、いい意味での厚かましさみたいなものが完璧すぎて、とってもチャーミングでかわいい!大好きです。
とりあえず、見どころが満載すぎるので、もう1回は観ないと満喫できません(笑)
まとめ
嘘で塗り固められたお話で、お園さんは引っ込みがつかなくなったのかもしれません。でも逆に言えば、そのおかげで亀遊の純粋な恋心は、誰にも茶化されずにすんだとも言えるのかな…と。そこだけは誰のものでもなく、藤吉とちえ(亀遊の本当の名前)だけのもの。それを結果的に守れたのも、お園さんだけだったのかもしれません。深読みしすぎですけどね(笑)
今月はスケジュール的に観に来られないかも…と思っていたけど、調整してよかった。予想以上に面白かったです。いつものことながら舞台でも観たかったな〜と思いつつ、スクリーンで勘三郎さんに会えたのは嬉しかった。
そして来月は、勘三郎さんが立ち上げた平成中村座だ〜!

