多田美波―光、凛と ゆれる(2026年10月)

透明なパーツが吊られた多田美波の光造形と、壁に落ちる影 美術館・博物館
透明なパーツが吊られた多田美波の光造形と、壁に落ちる影
透明なパーツが吊られた多田美波の光造形と、壁に落ちる影

透明なパーツがいくつも吊られた照明から柔らかい光がこぼれて、床にはその影がふわり。そのあとコレクション展で、今回いちばん好きになった吉田博の《帆船》に出会って、気づけば閉館ぎりぎり。やはり今日も最高でした。

東京都現代美術館で観た2つの展示

東京都現代美術館で、企画展「多田美波―光、凛と ゆれる」と、コレクション展「MOTコレクション いつかの光を今みている」を観てきました。多田美波展のチケットで、コレクション展も観られます。

多田美波(1924〜2014)は、戦後の日本で抽象彫刻家・造形作家として活躍した人。当時広まった工業素材を作品に取り入れ、公園や駅、ホテル、劇場など、街のいろいろな場所に作品を残しています。今回は、本人が「光造形」と呼んだシャンデリアなどの照明作品も含めて、約70点が並ぶ没後初の大規模回顧展です。

MOTコレクションは、美術館が持つ約6,100点の作品から、テーマを決めて紹介する展示。今期のテーマは「光」と「時間」です。

どちらも「光」がキーワード。このときは、そこまで気にしていなかったんですけど・・・

多田美波―光、凛と ゆれる

背面と留め具が見たい

まずは企画展から。大きく波打った金属の作品は、近づくと表面の質感がすごい。

そして気になるのが、壁への取り付け部分。角度を変えるとワイヤーや金具が見えて、ついのぞき込んでしまいました。留め具が見えるの、好きなんです。作品の背面を見るのは大好物(笑)

壁への取り付け部分が見える、波打った金属の作品
壁への取り付け部分が見える、波打った金属の作品

映り込みも、影も、作品のうち

鏡のような金属の作品には、展示室や天井、照明がゆがんで映り込みます。どうしても周りの風景が映ってしまうんだけど、それもまた作品なんだろうな。おもしろい。

天窓が映り込む鏡面の作品
天窓が映り込む鏡面の作品

吹き抜けの展示室では、鏡面の作品がいくつも天井から吊られていて、天窓から入る自然光で、壁に大きな影ができていました。透明な作品の下の鏡には展示室が映り込み、作品の中をのぞくと、光と影と反射が重なって、すごく不思議な見え方に。

吹き抜けの展示室に吊られた鏡面の作品と、壁に落ちる大きな影
吹き抜けの展示室に吊られた鏡面の作品と、壁に落ちる大きな影

窓からは強い西日が入って、作品の表面を照らしていました。太陽すごいね、西日・・・。照明だけじゃなく、この時間だから見られた光でした。

西日が当たる大きな立体作品
西日が当たる大きな立体作品

光造形の柔らかい光

いちばん「おぉ」となったのは、照明の作品です。

透明なパーツがたくさん空中に吊られていて、そこから柔らかい光がこぼれてきます。床や壁には、パーツの形がそのまま影になって落ちていて、光も、影も、パーツの形も、全部が素敵でした。

空中に吊られた透明なパーツが柔らかく光る光造形
空中に吊られた透明なパーツが柔らかく光る光造形

MOTコレクション いつかの光を今みている

吉田博《隅田川》から《帆船》へ

コレクション展で足が止まったのが、吉田博(1876〜1950)の木版画です。

まずは『東京拾二題』から《隅田川》《隅田川 霧》《隅田川 夕》の3点。同じ構図なのに、色が違うだけで、霧がかかったり、夕方になったり。木版画なんだけど、同じ版で違う時間になる。これがめちゃくちゃおもしろい。

その先にあったのが、今回いちばん好きだった《帆船》のシリーズ。同じ版木で色を変えて、朝・午前・午後・霧・夕・夜の6つの時間帯を描き分けた連作です。

吉田博《帆船》の連作6点が並ぶ展示風景
吉田博《帆船》の連作6点が並ぶ展示風景

同じ帆船、同じ構図なのに、空の色も、海の色も、空気までまるで違う。順番に見ていくと、朝から夜へと時間が進んでいきます。

いちばん好きなのは《帆船 夜》。季節なら冬、時間なら夜がいちばん好きなので、まあ、そうなりますよね(笑)

吉田博《帆船 夜》
吉田博《帆船 夜》

横尾忠則と杉本博司

横尾忠則の《暗夜光路 赤い闇から》は、赤く照らされた墓地と、鮮やかな緑の木。ぱっと見で、すごい。

杉本博司は正直そこまで・・・なんですけど、劇場のシリーズは好きでした。暗い劇場の真ん中に、白く光るスクリーンが浮かぶモノクロ写真です。作品が小さめなこともあって、外から劇場をのぞき見ている感じがするんです。これが大きな作品だったら、劇場の中にいる感じになるんだろうな。

まとめ

最初は別々の展示として観ていたけど、振り返ってみると、惹かれたものは同じでした。同じものなのに、光や時間で違って見えること。

多田美波では、映り込みや影、西日。吉田博では、同じ版の帆船が朝から夜へ。2つの展示で「ピンときた」理由は、ちゃんとつながっていたみたいです。

外に出たら、もう夕方。駅に着く頃には夜が始まっていました。明るいうちに着いて、帰りは夜。なんだか《帆船》みたいな1日です。

夕方の東京都現代美術館
夕方の東京都現代美術館

館内は思っていたより人が多くて、特に多田美波展は混み気味。2時間半いても閉館ぎりぎりで、カフェにもショップにも寄れず・・・また次回。西日の入る時間の展示室も、なかなかよかったですよ。

東京都現代美術館 基本情報
展覧会名多田美波―光、凛と ゆれる/MOTコレクション いつかの光を今みている
会期多田美波―光、凛と ゆれる 2026年8月29日(土)〜12月6日(日)/MOTコレクション いつかの光を今みている 2026年9月19日(土)〜2027年1月6日(水)
会場東京都現代美術館 企画展示室B2F(多田美波展)/コレクション展示室(MOTコレクション)
所在地東京都江東区三好4-1-1
開館時間10:00〜18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)。11月の金曜日は20:00まで
休館日月曜日(9月21日、10月12日、11月23日は開館)、9月24日、10月13日、11月24日、12月28日〜1月1日
料金多田美波―光、凛と ゆれる 一般1,600円/大学生・専門学校生・65歳以上1,100円/中高生640円/小学生以下無料(このチケットでMOTコレクションも観覧可)。MOTコレクションのみ 一般500円/大学生・専門学校生400円/高校生・65歳以上250円/中学生以下無料
アクセス東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2出口より徒歩9分、都営大江戸線「清澄白河駅」A3出口より徒歩13分、東京メトロ東西線「木場駅」3番出口より徒歩15分、都営新宿線「菊川駅」A4出口より徒歩15分
所要時間の目安2つの展示をじっくり観て2時間半ほど
備考11月の金曜日は17:00以降の入場で観覧料2割引(オータムナイトミュージアム2026)。料金・開館情報は2026年10月時点
ひとりさんぽメモ館内は思っていたより人が多く、特に多田美波展は混み気味でした。2つの展示をじっくり観ると2時間半ほどかかり、閉館ぎりぎりに。カフェやショップにも寄りたいなら、早めの時間に入るのがおすすめです。チケットは当日、館内のチケット売り場でも買えました。夕方は展示室に西日が入って、作品の見え方が変わるのも楽しいですよ。
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