
菊五郎さんの三役の演じ分けに目が離せず、政岡の「ようでかしゃった」で涙腺崩壊、花外のドブ席で観た仁木弾正にめっちゃしびれた。千穐楽の歌舞伎座では大向こうがすごかった気がする。気のせいかもしれないけど、客席の熱が高かった。やはり今日も最高でした。
裏表先代萩(うらおもてせんだいはぎ)ってどんなお話?

今回の昼の部は『裏表先代萩』の通し狂言。通し狂言とは、ひとつの演目を筋がわかる形で、複数の場面を通して上演すること。歌舞伎は場面ごとに切り出して上演されることも多いので、通しで観られる機会があるとすごく嬉しい。
正式な外題は『梅照葉錦伊達織(うめもみじにしきのだており)』、通称が『裏表先代萩』。「裏表」というのは、
– 「表」 = 政岡・仁木弾正を中心とした、足利家のお家騒動
– 「裏」 = 町医者・道益を殺した下男小助の事件
– そしてこの2つは「毒薬と金」でつながっている☠️💰
表と裏が交互に進んでいくうちに、「あ、この毒薬とお金が、両方の話をつないでいるのか」と見えてくる構造のおもしろさ。政岡の悲劇だけでなく、その裏側で小助の悪事が走っているから『裏表』なんだなぁと、観終わって納得。

最初に小助や道益の場面が出てきて「あれ?政岡どこ?」となっても大丈夫。あとで御殿の場に入ると「あ、この毒薬の話がここにつながるのか」と見えてきます。
三月に開催された中村屋公演のトークコーナーで、七之助さんがこの演目の見どころについてお話しされていて、ずーーーっと楽しみにしていた演目。今回、菊五郎さんは下男小助・乳人政岡・仁木弾正の三役を勤められ、なかでも仁木弾正は初役とのこと。表と裏の主役を一人で勤めるという、なんとも贅沢な配役・・・!

菊五郎さんの三役、目が離せない一日

通し狂言と聞くと「長そう・・・」と身構えてしまうのですが、菊五郎さんの三役の演じ分けで、ずっと目が離せなくて、あっという間。知らぬ間に終わってた。もしかしたら気絶してたのかしら。
なにせ今回の三役は、表の世界の乳人・政岡と仁木弾正、そして裏の世界の下男・小助。
さっきまで母として子を思っていた政岡が、次の場面では妖艶な仁木弾正になって登場し、かと思えば裏の世界の下男・小助として、また別の顔を見せる。頭では「同じ人」とわかっているのに、目の前の空気がガラッと変わる感じでした。
「次はいつ出てくるんだろう」と気を抜けないまま、気づけば終演時間。やっぱり気絶してたのかも。
政岡の「ようでかしゃった」で号泣
政岡のシーンは、もう耐えられませんでした。
物語を整理するとこんな感じ👀
1. 政岡は若君・鶴千代の乳母。毒を警戒し、自分の作ったごはん以外は鶴千代に食べさせないという徹底ぶり。
2. 我が子・千松にも「いざという時には鶴千代様をお守りするのだぞ」と、日頃から言い聞かせている。
3. ある日、敵方の栄御前(さかえごぜん)が「お見舞い」と称してお菓子を持ってくる。もちろん毒入りのお菓子。だけど身分が高い人からの贈り物だから断れなくて、政岡困惑〜🥹
4. それを見ていた千松が飛び出して、鶴千代より先にお菓子をぱくり!(きゃーーーーーーーー!!)
5. 毒入りがバレたら困る八汐(やしお)が、「主君のお菓子を勝手に食べるとは、この無礼者!」とかなんとか言って千松を刺し殺す。証拠隠滅のためとはいえ、非道すぎる。いや、敵方だから非道で合ってるのか。
6. 我が子が目の前で殺されても、政岡は顔色ひとつ変えない。ここで泣いたら、千松が鶴千代の身代わりになったことがバレてしまう。それを見た栄御前は、政岡が千松と鶴千代を取り替えて、こちらに鶴千代を殺させたのだと思い、「政岡は味方なのだ」と勝手に勘違い。
7. そして栄御前は、悪人たちの名前が書かれた連判状を政岡に渡してしまう。敵の証拠をまさかの手渡し。周りに人がいなくなり、政岡はようやく母の顔に戻る・・・そしてここで「ようでかしゃった」と千松に。
8. そのあと、斬りかかってきた八汐を政岡が討つ。スッキリした、でも悲しい・・・。しかもそこへ鼠が現れて、大事な連判状をくわえて逃げていく。え、まだ終わらないんですか?政岡の余韻に浸る時間、ください。
・・・と、まぁこんな感じに文字にするとサスペンスみたいなんだけど、これがもう涙なしには観られない場面。
「主君を守れ」と教えた通りに、命をかけて母との約束を守り抜いた我が子への、「ようでかしゃった」というねぎらいの一言。
人がいなくなって、ようやく千松に声をかける政岡。
「ようでかしゃった」
その一言で、もう無理でした。
ずっと母の顔を出せなかった政岡が、やっと母に戻る。その間がつらい。長い。つらい。
花外のドブ席で観た、花道の仁木弾正
そして連判状をくわえて逃げた、あの鼠・・・その正体こそが、花道に現れる妖艶な仁木弾正。
今回のお席もお気に入りの花外のドブ席。花道の外側、役者さんがすぐ横を通っていく席です。視界良好。花道を歩く役者さんが目と鼻の先を通っていくという、なんとも素敵なお席。
政岡の涙が乾かぬうちに、花道に妖艶な仁木弾正が登場。
その迫力たるや、本当に目の前で見ているとは思えないほど。さっきまで号泣していたのに、今度は迫力にしびれて、もう胸いっぱい。
千穐楽だからなのか、この日は大向こうの声もよく響いていた気がします。気のせいかもしれないけど、客席の熱がいつもより少し高かったような。

終わってから少しぼーっとしたのは初めてかも。やっぱり今日は気絶してたのかな😵
昼夜通しの日の過ごし方
今回は昼夜連続での観劇。昼の部が終わったら、いったん劇場の外に出てまた改めて入場することもできますが、この日はロビーで待機しました。


2階ロビーにいる係員の方に、夜の部のチケットをもぎってもらえば、あとは客席がオープンするのを待つだけ。昼の部終演直後はわりと人が少なくて、ロビーは静かでとても穏やか。コーヒー片手に昼の部の余韻にじっくり浸れる時間です☕️
そして、この後は待ちに待った夜の部の連獅子!

ちなみにお弁当は四月大歌舞伎の特別仕様のもの🍱
彩りもきれいで、千穐楽のお祝いムードにぴったり。ひとつひとつ味わって、ゆっくりいただきました。
まとめ
千穐楽の空気、菊五郎さんの三役、そして花外で観た花道の迫力。
一日の中にいろんな顔の歌舞伎が詰まっていて、終演後もしばらくぼーっとしていました。
通しで観ると、場面と場面がつながっていく感じがやっぱり楽しい。
・・・長いけど。
でも、またこういう通し狂言があったら観に行きたいです。
やはり今日も最高でした。
関連リンク


コメント